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3色型色覚と4色型色覚

赤の見え方の違いRGBと言う言葉をご存知でしょうか。そう、色の3原色のことです。最近は、R(赤)G(緑)B(青)に補助的にY(黄)を加えたテレビも市場に出ているそうなのですが、基本的にはRGBが3原色とされます。私たちは、目の網膜を通じて色を感じています。網膜には、3種類の「錐体細胞」という視細胞があります。その3種類がR(赤)G(緑)B(青)なのです。
錐体細胞というのは、ちょっと難しい言葉かも知れませんね。簡単に言うと、理科の実験で使ったプリズムの原理で色を見分ける細胞と思えばいいです。

私たちは、色を扱う職業なので、色をRGBならR:100、G:75、B:133、CMYKならばC:100%、M40%、Y0%、K0%と言ったように指標で表します。

これらは、さも普遍的客観的に表しているかのように見えますが、実はテレビやコンピュータのモニタがRGBで色を表現するのは、人間の錐体細胞を原理とし て模倣したものなのです。意外に思われるかもしれませんが、RGBの3原色というのは、人間という生物の知覚に合わせたものであって、物理じゃないんですね。

鳥や昆虫、爬虫類には5色型や6色型の色覚を持つものもいます。彼らから見たら、きっとRGBは3原色でも何でもないんです。派手な鳥は人間が見る以上に派手に見えていて、虹も7色ではなく10色やそれ以上に見えているのかも知れません。「人間には見えていない色や模様」というのがあったりもするんですね。

人間の目の、各錐体細胞には、色を区別するオプシンタンパクという視物質が存在しています。つまり、青オプシン、緑オプシン、赤オプシンの3種がそれぞれ、青を感知する錐体、緑を感知する錐体、赤を感知する錐体(それぞれS錐体、M錐体、L錐体。波長の長さから、Short、Middle、Longです)というわけです。

このうち、赤オプシンは2種類あることが分かっていて、少し難しい言葉ですが、吸収極大波長が5〜6nm(ナノメートル)ほど違います(600nmと606nm。上図。PCディスプレイで再現出来る色の外なので、相対差の目安です)。ちょっと違う赤だと言うことですね。波長が長い方が赤色が深く見えます。僅かな違いですが、並べてみると誰でも区別は出来ます。そんなわけで、実は単に「赤」と言っても、あなたの見ている赤と、隣の人が見ている赤とでは、少し違う可能性があるんですね。日本人の場合の遺伝子分布は、深い赤の人が78%、明るい赤の人が22%だそうです。

遺伝子の話をしましたのは、赤オプシンの遺伝子は、一般にX染色体上に存在するとされるためです。ご存知の通り、男性の性染色体はXY、女性はXXですね。

ということは、女性の場合、片方のX染色体が深い赤で、もう片方の染色体が明るい赤オプシンの遺伝子を持つ、という場合があり得ることになります(女性の体の、ひとつの細胞内においては一方のX染色体は、不活性化されるのでしたね)。深い赤の人が78%、明るい赤の人が22%とすると、単純計算ならば 女性の34.4%が深/明両方の赤オプシン遺伝子を持つ、ということになりそうなものですが(100%−(両方深い赤の人が0.78の二乗=0.608 で60.8%)−(両方明るい赤の人が0.22の二乗 = 0.048で4.8%)=34.4%)、実際のサンプリングでは、女性の約2%しかいないそうです。しかし、別の研究では女性の50%、男性の8%とするものもあり、こちらの説だと、赤オプシンがX染色体由来であると言うこと自体が説明できなくなってしまいます。ちょっと説が分かれているようですね。

いずれにしても、人間にも4色型色覚を持つ人が一部にいる、ということになります。いや、別の色ではなく赤の波長の違いですから変形3色型とでも言った方が良いでしょうか。

さて、気になるのは、2種類の赤オプシンを持っている人の目には、どのように色が見えているのだろうか?それ以外の人と違うのだろうか?と言うことですが、先ほども申し上げましたように、深い赤の人と明るい赤の人とで既に違っています。

両方持っている人が、赤を含む色を見分ける能力が高いのかについては、有意差を示すデータは今のところないようです。

以下は、私の推測で恐縮ですが、深い赤/明るい赤の両赤オプシンを持つ人が、赤を含む色を見分ける力が高い、と言うことはないのではないかと思います。理由は次の通りです。

1)紫や黄といった別の色 の(大きく波長の異なる)錐体細胞があるわけではなく、赤の僅かな違い。
2)その違いは、深い赤/明るい赤いずれの人でも容易に見分けられる可視光線の範囲内で、両方あることで 弁別能が高いとは考えられない(主に赤を感知するL錐体異常の人でも 正常色覚とほぼ同程度の弁別能を持つ人が少なくありません。日本では男性の22人の一人、女性の600人に一人が該当するそうです。もちろん大多数の3色型の男女も可視光線範囲内のスペクトルを十分に見分けられます)。

つまり、両方持つ人の感覚は、どの色を最も「赤らしく感じるか」という感受性において、深い赤でも明るい赤でもなく、その両方を合わせた中間の赤の感受性を持っているだけなのではないか、と思うわけです。

一方、深い赤と明るい赤の2種類のオプシンを持つ人は、近紫外線(地表に届くのはUV-AおよびBの380〜280nm)を見ることが出来るため色の識別能力が高いのだ、とする説明もあるようです。これは、可視光線の範囲が広いのだ、ということにもなるはずですね。ですが、それならば、近紫外線が反映されていないテレビやパソコンディスプレイの映像、印刷物等々は、その人たちの目には、他の人が2色刷りチラシでも見るかのように、実物とはかけ離れた再現性しか持たないものに見えているはずです(色調の違いとかそういう次元ではなく、色そのものが足りなく見えるはず)。

そのほか、通常の蛍光灯の光と虫除けのために紫外線を遮断した蛍光灯の光が違う色に見えてしまうとか、通常の可視光線を遮断する遮光カーテンでも紫外線を遮断しておらず眩しく見えてしまうとか、逆にその人が絵を描くとき、どんなに写実的に描こうとしてもそれ以外の人からはおよそ理解し難い色使いにしかならなかったり、図像を通しての意思疎通が成立しなかったり(とくにその人が図像情報の発信者であるときに、大多数の人が理解出来ないという現象)と、日常生活でも不自由が生じるはずです。

3)少ない方の説でも、女性の50人に1人(2%)いるのに、そんな話を普段聞くこともなく、長年RGBが色の3原色として用いられて来た。

可視光線の範囲
可視光線の範囲

人間の角膜は313nm以下の短波長の光と、1500nm以上の長波長の光を吸収してしまいますので、その間にある波長の光しか、水晶体には到達しません。さらに水晶体は、そのうちの380nm以下と780nm以上を吸収します。残りがいわゆる可視光線ということになります。この点で、深い赤型の人と明るい赤型の人とで可視光線の範囲を区別している資料は見当たりませんでした。ですので、両方を持っている人も、虫や鳥のようにこの範囲の可視光線の範囲外の色が見え、そのぶん色の弁別能が高くなるということはなさそうです。

4)もっと単純に考えて、深い赤型の人にも明るい赤型の人にも近紫外線は見えないのに、両方持っていると見えるという理由があるだろうか。

と言ったところでしょうか。
可視光線の範囲は、水晶体を通過して網膜に到達する時点で、みな同じ範囲になっているのに、その中で錐体細胞の種類に僅かな違いがあるからといって、色の弁別能が優れるということはないだろう(感受性の違いはともかく)、ということですね。

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